問題事例のご紹介
食品卸売業の事例です。
Bには、部下が5名いました。その部下の一人Cが、重大な懲戒事由により解雇となりました。その解雇に至る経過で、会社が部下Cの懲戒事由に当たる事実を知る前に、Bはその事実を知る機会がありながら、すぐに会社に報告していなかったことがわかりました。
すぐに報告していれば、取引業者の信用をなくすことが避けられたと考えられます。
Bの上司Dと社長は、すぐに解雇するとの考えが頭を過ぎりました。
実は、Bの不信行為は今回だけではありませんでした。
入社直後に、背任と考えられる行為が発覚していたのです。
背任は、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたとき」です。一般的に、会社で、このような微妙な事例と思われるケースは少なからずあるのではないでしょうか。
会社はその時、Bは入社直後であり、会社の忙しさもあって、懲戒処分をしないで見逃してしまいました。Bの上司Dと社長は、そのことが頭にあったことと、部下Cの懲戒事由にも関連しているのではないかと、かすかな疑いを持っていました。
状況証拠だけですので、解雇は難しいです。感情的に解雇できないことが社長には納得できませんでした。
入社直後の懲戒処分を文書で明確にすべきでした。難度3の事例です。度重なる懲戒事由があり、そのたびに文書にしていれば、解雇もできる場合があります。
今回の事実で、会社という組織として反省すべき点がありました。会社は社員の採用の選定の基準や評価を見直しすること、背任行為が生じないようなチェック体制を敷くことや、間違いを回避するように報告のプロセスを明確にすること等改善すべきことや学ぶべきことがあること、そして今回、解雇することになれば、トラブルが更に大きくなること、会社の経済的損失も大きくなることです。
それらのことを、私は具体的にアドバイスしました。
社長の冷静な判断で、解雇は回避しました。難度5の事例です。
感情で明確な結論が出ていても、証拠が明らかであるか、強い思い込みはないか、冷静に判断することが「会社を守る」ことになります。
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